カビ(真菌)による皮膚疾患
水虫について
まず、水虫という名前が初めて文献に登場したのは江戸時代の事です。田んぼ仕事をする季節になると足にボツボツとした水疱ができ、これがムズムズして非常にかゆい。当時は白癬菌に対する認識は皆無で、カビが悪さをしているとは思いもせず、水の中にいる正体不明の虫に刺されたと思い込んでいた様です。
これが水虫の名前の由来です。
足の水虫は正式には足白癬(あしはくせん)と言う病気です。白癬菌と言うカビの一種が、皮膚の一番外側にある角質層に入り込んで増殖することによって起こります。
カビは高温多湿の環境で活発に繁殖しますので、水虫は夏に悪化し冬に落ち着く傾向があります。ただし、靴の中は冬でも暖かく湿度が高い状況になりますので、長時間靴をはく生活の方は冬でも悪化してくる場合があります。
日本人の「5人に1人」は水虫にかかっているといわれています。その水虫患者の過半数は爪白癬と言われています。
つまり日本人の10人に1人は爪白癬患者と考えられます。
白癬の診断には幹部の皮膚を一部採取し(ほとんどの方は痛みを感じることはありません)顕微鏡で観察する検査があります。おおよそ1~2分で結果が分かります。
また、水虫と思っている方のおよそ30%は別の疾患と言われています。自己診断せずに診察を受けることをお勧めいたします。
おもに次の3つに分けられます。
- 『趾間型(ジグジグ水虫)』
趾間(足の指の間)の皮がむけてきたり、赤くなったり、ひび割れを生じたりするタイプです。患部からリンパ液が出てきてジクジクとした状態になります。かゆみが強いのが特徴です。このタイプは二次的な細菌感染や、塗り薬によるかぶれが起こりやすいです。
また、夏に症状があらわれ、冬にはおさまる傾向があります。 - 『小水疱型(ポツポツ水虫)』
足の裏や側面にたくさんの小さな水ぶくれができてかゆみをともないます。水疱が破れてかさかさと皮がむけた状態も見られます。
また、夏に症状があらわれ、冬には治まる傾向があります。 - 『角質増殖型(カサカサ水虫』
足の裏全体の皮膚が分厚くなって、かかとの部分ではひび割れを生じることもあります。夏場より空気が乾燥する冬の方がひび割れなどの症状が強く現れます。通常かゆみは伴いません。爪白癬(爪の水虫)を合併することが多いタイプです。角質層が分厚く肥厚しているため塗り薬の吸収が悪く治療に時間がかかります。飲み薬で治療する事もあります。
夏に水虫の症状が現れていても、冬になると治まってしまうことがあります。しかし治療していない状態では、冬でも足の皮膚に白癬菌は残っているので、次の夏になるとまた症状が出てきます。そのようなことを繰り返すうちに、だんだんと症状が重くなって水虫は治りにくくなってしまいます。
さらに、たかが水虫と思って放置していると、いろいろな合併症を起こす危険性があります。代表的な合併症は…。
【爪白癬(爪の水虫)】
爪は、皮膚の角質が硬く変化したものです。足白癬を放置していると白癬菌が爪にも感染を起こし爪白癬を生じます。
硬い爪の中まで塗り薬は十分浸透しないので、水虫を塗り薬で治療しても爪の中に白癬菌が残ってしまい、塗り薬をやめるとまた爪から皮膚に菌が出てきて水虫の症状を繰り返します。また、爪白癬からは、常に白癬菌がまき散らされてしまうので、家庭内で水虫の感染源にもなります。
治療法としては、液材の塗り薬や、飲み薬(市販されていません!)を用いた治療など行います。
【二次感染症】
水虫になるとその部分の皮膚のバリヤーが弱くなるので、2次的な細菌感染を生じやすくなります。趾間型の水虫によく見られる合併症です。
細菌感染を生じると、指の股の部分のジクジクとした浸出液の量が増え、足の甲からスネにかけて赤くはれて痛みを伴うようになります。ひどくなると足の付け根のリンパ腺がはれたり、熱が出て体がだるくなったりしますこの状態を「蜂窩織炎 ほうかしきえん」と言います。
二次感染を起こした場合、水虫の治療よりも細菌感染の治療を優先します。できるだけ足の安静を保ちながら抗生物質の点滴、又は内服を行います。重症の場合は入院による加療が必要になることもあります。糖尿病などの既往がある場合は重症化しやすいので、注意が必要です。
水虫≠「足がかゆい」((+_+))
患者さまに水虫のイメージは?と、お伺いすると「足がかゆくなる」とほとんどの方がおっしゃいます。しかし、先に述べたように足白癬には様々なタイプがあり、むしろ足白癬の内「足の皮がむける」と言った自覚症状以外は70%はかゆみはありません。また、足白癬の症状と似た症状でも、患部に白癬菌が存在しない全く別の病気(水虫と間違われやすい病気)もあります。このような病気に水虫の治療薬を使用しても症状は改善しないどころかむしろ症状が悪化してしまいます。
水虫の治療で大事なことは、そもそもその症状が本当に水虫なのかどうかと言う事です。それを確認するために、皮膚の角質を少量採取させていただき、その中に白癬菌がいるかどうか、顕微鏡での検査をさせていただいております。白癬菌が確認出来れば「足白癬」と診断し、治療が開始されます。
ところが、水虫の治療薬はドラッグストアなどに行くと簡単に購入することができるので、「足がかゆい」と言うだけで水虫の薬を購入し使用される方が多いようです。しばらく使用して症状が良くならない、あるいは症状が悪化したという事で来院される方も少なくありません。
◎実はこの事が水虫の治療を遠回りにしています。
水虫薬を使用したけれども症状が改善しない原因には次のようなものが挙げられます。
- 足白癬に対して使用した水虫薬の効果が足りない。
- 足白癬に対して使用した水虫薬でかぶれてしまっている。
- そもそも足白癬でない症状に対して水虫薬を使用してしまった。
- そもそも足白癬ではない症状に対して使用した水虫薬でかぶれてしまった。
- 虫薬でかぶれてしまった。
[5]の場合は患部からの浸出液が多く、腫れや痛みを伴う事で診断できます。
また、この場合2次感染の治療が優先されますので、それが改善されてから白癬菌を確認し足白癬の治療を行っていきます。
ところが、[1][2][3][4]の区別は初めて来院された時には容易ではありません。既に水虫薬を使用されていると、顕微鏡で白癬菌が見つけにくい状態ですので薬を使用する前の状態が足白癬であったのか他の病気であったのか判断ができません。その場合、水虫薬の使用をやめて、かぶれの治療を行います。その後の診療時に白癬菌の検査を行い、白癬菌をきちんと確認出来てから水虫の治療開始となります。
!(^^)!早期発見早期治療で水虫完治を一緒にがんばりましょう!!
足に水疱ができたり、皮膚がかさかさと向けたりする異汗性湿疹(いかんせんせいしっしん)、膿胞(小さな膿のたまり)がたくさん出来てくる掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)、冬の空気の乾燥によるかかとのヒビ割れ、間違った塗り薬を使用したことによる接触皮膚炎(かぶれ)など、水虫と症状が似ていて区別しなければいけない病気が沢山あります。
《異汗性湿疹》
手のひらや足の裏、指の側面などに生じる湿疹で、症状としては小さな水疱が多数できて、かゆみを伴います。小水疱型の水虫と似た症状です。
《掌蹠膿疱症》
手のひらと足の裏に膿胞(小さな膿のたまり)が繰り返し現れる、慢性の皮膚疾患です。爪の変形を伴う場合もあり、小水疱型の水虫や爪白癬に似た症状が見られます。扁桃炎や歯科領域の細菌感染(虫歯や歯周病)、金属アレルギー(虫歯治療で使用する金属製充填物に対するアレルギー)などが原因となります。喫煙との関連も指摘されています。
《かかとのヒビ割れ》
人は立って生活する為長年圧迫を受けてきた足裏の皮膚は角質層が分厚く肥厚した状態になります。分厚くなった角質層には体の中からの水分が行き届かないのでうるおいがなくなり弾力を失います。特に冬場空気が乾燥してくると角質層の乾燥も進み少しの外力でもひび割れを生じるようになります。このような状態は角質増殖型の水虫と区別する必要があります。
《接触皮膚炎》
水虫ではない症状に市販の水虫薬を使用して症状が悪化したり、かぶれてしまう事があります。塗り薬で症状が悪化している事に気付かないと早く治そうとたくさんの薬を使用し、患部からはみ出た薬によって、かぶれの範囲が広がることがあります。
また、水虫に「お酢」が効くと言われ足を巣につけてひどくかぶれて来院される患者様もおられます。
塗り薬を使用しかゆみが増したり、症状の改善が見られなかったり、悪化するような場合はすぐに使用を中止し受信されることをお勧めいたします。
水虫を治すのは、やる気次第!!
水虫はしつこく治りにくい病気です。しかし最近では1日1回で効く水虫用の優れた薬もあり、根気良く治療すれば、治せるようになりました。
スリッパ、タオル、爪切りを別々にしましょう
じゅうたん、床などをいつも清潔にしましょう。また、お風呂の足ふきマットは患者様と、ご家族別にしてよく洗い、日光で干す等しっかり乾燥させておいてください。
足の指の間の水分や汗をよく拭き取り乾燥させるよう努めましょう。
通気性の良い履物や吸水性の良い靴下にしましょう。
1日はいた履物は汗で湿った状態になりますので、良く乾燥させてから履くようにしましょう。
お仕事で同じ靴を履いている方は日中1度靴下を取りかえるのも良いでしょう。
足水虫の治療は、根気と時間がかかるものですが、健康な足を目指して一緒に頑張りましょう!豊郷たちかわ皮ふ科クリニックは全力で患者様を応援致します!(^^)不安な事、疑問に思われた事、なんでも結構です。いつでもお気軽にお訊きください。
お待ちしております(#^_^#)
おむつかぶれ ~カビが原因のことも~
- 皮膚が湿ると抵抗力が弱くなり、おむつがこすれることによって皮膚に小さい傷ができます。
- 尿と便によってアンモニアが発生し、おむつの中がアルカリ性になり、炎症を起こしやすくなります。
- アンモニアや、便の中の酵素によって皮膚炎をおこします。
- 弁は軟便ほど、皮膚炎をおこしやすくなります。
- おむつ交換をこまめにする
- 尿よりも便の始末を早めにする。
- 市販のおしりふきは、かぶれることがあるのでなるべく常用しない。
- おしりふきは、ぬるま湯でしぼった柔らかいガーゼやタオル、脱脂綿を用いて、強い力を加えず優しくふく。
- 下痢や軟便の時は、できればぬるま湯でシャワー浴や坐浴、又は水を含ませた脱脂綿で洗浄し、柔らかい布でそっと水分を吸い取る。
- おしりふきや洗浄の後は、軟膏やオリーブオイルを塗り、皮膚を保護する。
- 下痢や軟便が続く場合、小児科で相談する。
おむつかぶれの薬を塗っていても良くならない場合、「カンジダ」という名前の「カビ」が繁殖している可能性があります。この「カンジダ」はどこにでもいる「カビ」で、オムツの中など、じめじめとした環境のところで発育します。顕微鏡による検査をするとすぐに分かりますので、豊郷たちかわ皮ふ科クリニックでご相談下さい。